つみたて投資Lab
成長株株価指標PERPSRPEG初中級者

成長株・割安株の比べ方|架空3社でPER・PSR・PEGを計算

「PERが低い会社」と「売上が伸びている会社」は、どちらをどう比較すればよいのでしょうか。答えを出す前に、株価を何で割った数字なのかを確認すると、同じ会社が指標によって違って見える理由が分かります。

この記事では、実在しない3社の数値を使い、電卓で再計算できる比較表を作ります。実際の銘柄ランキングや推奨価格ではありません。成長株の基礎、グロース・スタンダード市場、業界別の指標比較を一つの手順で学べるようにしています。

成長株・割安株・高配当株は、見ている軸が違う

成長株は、売上や利益が速く伸びると期待される企業の株式を指す一般的な呼び方です。割安株は利益や純資産などに対して価格が低いと評価される株式、高配当株は株価に対する配当の割合が高い株式に着目します。これらは排他的な分類ではなく、成長しながら配当を出す会社もあります。

大切なのは、企業の成長と投資家の収益を分けることです。利益が増えても、購入時の株価にそれ以上の成長が織り込まれていれば損失になることがあります。この違いを、まず数値で確かめます。

練習用の入力表:単位と期間をそろえる

以下はすべて当サイト作成の架空データです。3社とも同じ決算期・同じ会計基準と仮定し、株式分割・増資・自己株式はなく、期中平均株式数と期末株式数は100万株で一致するとします。利益は親会社株主に帰属する年間純利益、純資産は普通株主に帰属する自己資本の想定値です。

入力項目 A社:成長期待型 B社:成熟事業型 C社:売上拡大・赤字型
株価(同じ基準日時点) 2,000円 1,050円 1,500円
株式数 100万株 100万株 100万株
前期売上高 1,000百万円 1,000百万円 1,000百万円
当期売上高 1,200百万円 1,100百万円 1,500百万円
当期純利益 100百万円 105百万円 ▲60百万円
期末自己資本 500百万円 1,500百万円 300百万円
年間1株配当の仮定 30円 50円 0円
翌期EPS成長率の仮定 25% 5% 算定しない

最後の行は、売上成長率から求めた数字ではありません。PEGの計算練習のために置いた将来仮定です。

EPS・PER・PSRを計算する

EPSは1株当たり純利益です。PERの分母は会社全体の利益ではなく、このEPSです。JPXの用語解説も、株価を1株当たり当期純利益で割る指標としています。PSRは株式時価総額を売上高で割ったものです。Nasdaqの定義も確認できます。

株式時価総額 = 株価 × 株式数
EPS = 年間純利益 ÷ 期中平均株式数
PER = 株価 ÷ EPS
PSR = 株式時価総額 ÷ 年間売上高
売上成長率 = (当期売上高 ÷ 前期売上高 − 1) × 100

A社なら、時価総額は2,000円×100万株=20億円です。純利益1億円÷100万株でEPSは100円、PERは2,000円÷100円=20倍、PSRは20億円÷12億円≒1.67倍になります。

計算結果 A社 B社 C社
時価総額 20億円 10.5億円 15億円
売上成長率 20% 10% 50%
EPS 100円 105円 ▲60円
実績PER 20倍 10倍 比較に用いない
PSR 約1.67倍 約0.95倍 1.00倍
純利益率(純利益÷売上高) 約8.33% 約9.55% ▲4.00%

C社のPERを機械的に割ればマイナス25倍ですが、これを「10倍より安い」と並べる意味はありません。また、C社はA社よりPSRが低く、売上成長率は高いものの、利益は赤字です。売上高だけを分母にするPSRでは、赤字の理由や資金繰りが見えないことがこの表から分かります。

PEG:成長率の置き方だけで順位が変わる

PEGはPERをEPS成長率で割る指標です。Fidelityの解説では、予測するEPS成長率を使っています。本例は当期実績EPSによるPERと、翌期EPS成長率の仮定を使う簡易教材です。実際の比較ではPERが実績か予想か、成長率が何年間の予測か、予測主体は誰かをそろえます。

A社のPEG = 20 ÷ 25 = 0.80
B社のPEG = 10 ÷ 5 = 2.00

25%は「25」として入力します。「0.25」で割ると100倍違う値になります。C社のような赤字企業や、成長率が0以下の企業では、同じルールでPEGの大小を比較しません。

ここでA社の成長率の仮定だけを25%から10%へ下げると、PEGは20÷10=2.00となり、B社と同じです。PERも現在の利益も変えていないのに、将来仮定だけで比較結果が変わりました。「PEGが1未満なら買い」という合否基準にはできません。

PBRと配当利回りを足して、B社の低倍率を点検する

PBRは株価÷1株純資産、配当利回りは年間1株配当÷株価×100です。本例では株式数の定義を同じにしているため、PBRを時価総額÷自己資本でも計算できます。

計算結果 A社 B社 C社
1株純資産 500円 1,500円 300円
PBR 4.00倍 0.70倍 5.00倍
配当利回り 1.50% 約4.76% 0%
配当性向(1株配当÷EPS) 30.00% 約47.62% 比較に用いない

B社は低PER・低PBR・高めの配当利回りがそろいます。しかし、例えば自己資本1,500百万円のうち600百万円が回収困難になり、自己資本が900百万円へ減ると仮定すれば、同じ時価総額でもPBRは10.5億円÷9億円≒1.17倍です。低PBRを見るときは、資産の中身を確認する必要があります。

配当利回りも同様です。B社の株価が1,050円から840円へ20%下がり、配当50円を受け取った場合、税・手数料前の損益は840+50−1,050=▲160円、収益率は約▲15.24%です。配当は価格下落を埋めるとは限りません。低倍率の理由が事業縮小や資産価値への懸念で、評価の改善につながらない状態は「バリュートラップ」と呼ばれます。

成長株で忘れやすい、増資と赤字の質

ここからは最初の表とは別に、増資があった条件を考えます。利益が80百万円から100百万円へ25%増えても、EPS計算に使う期中平均株式数も80万株から100万株へ25%増えれば、EPSはどちらも100円です。会社全体の成長率を、そのまま1株当たりの成長率に置き換えることはできません。

C社は売上が50%伸びても赤字です。ここで確認したいのは、赤字が設備・開発・販売への先行投資なのか、販売するほど損失が増える構造なのか、手元資金がいつ必要になるのかです。例えば手元現金300百万円、年間の現金流出100百万円を一定と置けば単純には3年分ですが、借入返済や設備投資が増えれば短くなります。会計上の純損失60百万円と現金流出100百万円も同じ数字ではありません。

実際の資料では、損益計算書だけでなくキャッシュ・フロー計算書、借入返済期限、新株予約権・増資の条件を一緒に読みます。決算書の読み方に基本をまとめています。

グロース市場・スタンダード市場は割安ラベルではない

「成長株」という投資上の分類と、「東証グロース市場」という上場区分は別です。JPXは市場ごとに、流動性、ガバナンス、事業計画・開示などの考え方を定めています。市場区分の公式説明を読むと、区分がPERの高低を判定する仕組みではないことが分かります。

市場区分 比較時に読むもの 区分だけでは分からないこと
プライム 事業構成、開示、株主との対話、流動性 元本の安全性、今の購入価格の妥当性
スタンダード 業績推移、資産の質、資本配分、売買のしやすさ 低PER・低PBRであるか、割安か
グロース 成長計画と進捗、赤字要因、資金調達 計画達成、将来の株価上昇

時価総額が小さいというだけで成長余地を決めたり、スタンダード上場というだけでB社のような特徴を当てはめたりしないことが重要です。注文時には出来高や買い気配・売り気配の開きも確認します。市場区分と実際の売買のしやすさは同じ尺度ではありません。

業界別比較を、自分の表にする

JPXの規模別・業種別PER・PBRは月末時点の集計で、連結・単体の区分があります。今日の予想PERと、別の月の業種別実績PERをそのまま比べないようにします。

比較表には以下の列を作ってください。初めから数字の大小を順位にするのではなく、同じ意味の数値を並べるための表です。

記録する欄 記入例・確認方法
価格の基準日 同じ日の終値。分割調整の有無も記す
対象期間 直近通期実績/今期会社予想を混在させない
利益の定義 連結純利益、EPS、調整後EPSを区別する
比較対象 同業3社など、事業が近い理由と異なる点を書く
業種集計 JPXの対象月・市場・業種・連結/単体・計算要領を記録
成長の中身 既存事業、買収、為替、一時利益を分ける
財務・CF 現金、借入期限、売上債権、投資支出を確認
自分の仮定 EPS成長率など、会社実績ではない数値を別欄にする

業種平均は、その業種の全社が同じ価値を持つという意味ではありません。3社のPERが10倍、20倍、40倍なら単純平均は約23.33倍、中央値は20倍です。さらに業種集計の計算方法が単純平均とは限りません。資料の計算要領に戻ってから、同業との違い、自社の過去との違いを説明します。

読み終わったら、次の3問で確認

  1. A社のEPSが100円から125円へ増え、PERが20倍から14倍へ下がったら価格は? → 125×14=1,750円。利益は25%増でも、2,000円からの価格変化は▲12.5%です。
  2. C社のPSRがA社より低いから、利益面でも割安? → いいえ。C社は赤字で、PSRには費用も資金繰りも入っていません。
  3. B社の配当が50円から25円へ減り、価格が1,050円のままなら利回りは? → 25÷1,050×100≒2.38%。過去の配当額だけで利回りを固定できません。

比較の結果は「この銘柄を買う」ではなく、どの数字が分かり、どの前提で見方が変わるかを説明できることです。家計の生活資金と投資資金を分け、保有全体での集中度も確認してください。

出典と更新について

定義・市場制度は出典欄のJPX、Nasdaq、Fidelityの公開資料を2026年9月18日に確認しました。3社の数値、計算例、質問は当サイトが作成した架空の教材で、実在企業の実績や市場予測ではありません。

本記事は一般的な学習用資料です。特定の銘柄の売買を推奨せず、将来の利益・配当・株価を保証しません。投資には元本割れの可能性があります。

※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。 投資判断はご自身の責任で行ってください。