つみたて投資Lab
KDDI通信株決算分析中級者向け

KDDIのQ1決算を読む|利益増加の内訳とセグメントの合計

KDDIの2027年3月期第1四半期は、売上高が前年同期比5.1%増、調整後営業利益は21.1%増でした。この決算を読むうえで重要なのは、「最も伸び率が高い部門」と「全社の増益額を最も支えた部門」は違うという点です。

本記事は2026年8月7日公表の決算を使った読解教材です。対象は2026年4~6月で、2026年9月18日に公式資料との照合と説明を更新しました。現在の株価評価や最新業績速報ではありません。

まず全社の増益額を固定する

会社の決算発表サマリーでは、売上高1兆4,873億円、調整後営業利益3,143億円と示されています。以下は丸め誤差を小さくするため、決算短信の連結業績表(PDF 4ページ)の百万円単位で計算します。

連結の数値(百万円) 前年Q1 今回Q1 差額
売上高 1,415,734 1,487,316 +71,582
調整後営業利益 259,473 314,262 +54,789
IFRSの営業利益 259,473 314,248 +54,775

調整後営業利益の増加54,789百万円は547.89億円です。以下の部門分析では、この増益額に戻れるかを確認します。売上の伸びと利益の伸びが異なる理由を、先に「AIの効果」「設備投資の一巡」と決めないことが出発点です。

セグメントを足すときは「その他」と消去を入れる

この期から報告セグメントはテレコムコア、パーソナルグロース、ビジネスグロースの3区分となりました。会社は比較用の前年数値も新しい区分へ組み替えています。以下は決算短信のセグメント情報(PDF 19ページ)を使います。

区分(百万円) 今回の売上高:内部売上込み 今回の調整後営業利益 前年の調整後営業利益 増益額
テレコムコア 1,083,671 210,706 176,317 +34,389
パーソナルグロース 280,820 55,491 50,773 +4,718
ビジネスグロース 165,152 18,453 15,180 +3,273
その他 58,775 29,869 17,809 +12,060
内部取引等の調整 ▲101,101 ▲257 ▲606 +349
連結 1,487,316 314,262 259,473 +54,789

「その他」は設備の建設・保守など、3報告セグメントに含まれない事業です。利益の調整額はセグメント間取引消去です。売上はグループ内取引も含むので、各部門の売上をそのまま連結売上で割って構成比にすると、分母と分子の範囲が合いません。

売上表の各表示値を手元で足すと、連結と1百万円の差が出ます。会社資料は百万円未満を四捨五入しているため、ここでは会社の連結計を使用しています。利益は次の式で一致します。

210,706 + 55,491 + 18,453 + 29,869 − 257
= 314,262百万円

3部門だけで終えず、調整まで含めることで、連結の数字と部門の数字がつながります。

成長率の首位と、増益への寄与を分ける

当サイトが上表から計算した増益寄与は以下のとおりです。

  • テレコムコア:34,389÷54,789≒62.8%
  • ビジネスグロース:3,273÷54,789≒6.0%
  • その他:12,060÷54,789≒22.0%

ビジネスグロースの利益成長率は21.6%で、テレコムコアの19.5%より高い一方、全社増益への寄与額はテレコムコアが大きいことが分かります。この比率は会社の採点や将来予測ではなく、公表した前年・当期利益の差から求めた算術上の内訳です。

会社の決算説明資料7ページは、モバイル通信収入を増益要因として説明しています。また、その他の増益にはミャンマー事業のリース債権引当率見直し影響が含まれます。通信収入の変化と、引当の見積り変更は、持続性を同じように考えないことが重要です。

この資料だけから、ビジネスグロースの増益額すべてをAI単独の寄与へ割り当てることはできません。事業名にAIが含まれることと、AIが何円の利益を生んだかは別の問いです。

利益率は、分母を明記して読む

内部売上込みの部門売上を分母にした今回の簡易利益率は、テレコムコアが210,706÷1,083,671≒19.4%、ビジネスグロースが18,453÷165,152≒11.2%です。

この計算では、ビジネスグロースの方が高利益率とはいえません。一方、内部取引価格やサービス構成が違うため、利益率の差だけから個々のサービスの優劣を決めることもできません。「成長率」「利益規模」「利益率」の3列を分けておくと、言葉の混同を防げます。

調整後利益とIFRS利益は、近くても定義が違う

会社は調整後利益を、非経常的な損益やポートフォリオ見直しに伴う一時損益を除いた指標として説明しています。今回の営業利益では、314,262−314,248=14百万円の差です。

ただし、この差が小さいことだけで、将来の利益が安定しているとは判断できません。決算説明資料34ページでは、営業利益と最終利益それぞれの調整を確認できます。営業利益の調整額と、最終利益の調整額を入れ替えないようにします。

PERを計算する練習:株価は仮定を置く

2026年8月7日時点の会社予想は、通期の基本的1株当たり調整後当期利益196.29円、年間配当84円でした(決算短信PDF 1~2ページ)。

ここでは当日の市場価格を評価せず、価格だけを変えた学習用の計算をします。下記の価格は実際の終値・目標株価ではなく、当サイトが設定した仮定です。

仮定の株価 調整後EPS196.29円を使う参考PER 配当84円を使う参考利回り
2,400円 12.23倍 3.50%
2,800円 14.26倍 3.00%
3,200円 16.30倍 2.63%

算式は株価÷EPSです。2,800÷196.29≒14.26倍であり、EPSを株価で割る計算ではありません。ここで使ったEPSは「調整後」の会社予想なので、他社の実績EPSによるPERと比較すると定義が異なります。価格だけでなく、利益予想と配当予想が変われば表も変わります。

この決算から持ち帰る3つの読み方

  1. 全社の増益額を決め、部門差額と調整の合計が戻るか確かめる。
  2. 最も高い成長率の部門と、全社への増益寄与が大きい部門を区別する。
  3. 営業の変化、引当などの見積り変更、株価評価を別々の表にする。

数字を別の四半期へ置き換えるときも、この順序を使えます。指標自体の計算はPER・PSR・PEGの比較教材で練習できます。

更新・訂正記録

2026年9月18日:公式決算短信に基づき、その他事業・内部取引消去と増益寄与を追記。PERの説明式を修正しました。旧版の、資料との対応が示せない同業指標・過去倍率レンジ・有利子負債比較、および設備投資一巡やAI単独寄与に関する推測は削除しました。これらを現在の評価として扱わず、再計算可能な決算教材へ改めています。

本記事は一般的な決算読解の教材であり、KDDIその他の銘柄の売買を推奨しません。会社予想は当時の見通しで、利益・配当・株価を保証するものではありません。投資には元本割れの可能性があります。

※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。 投資判断はご自身の責任で行ってください。