「売上高が伸びた」という記事を読んだとき、元の資料のどこを確かめればよいでしょうか。ここでは実在企業1社の決算短信を使い、他の人も同じ数字に戻れる記録を作ります。会社の購入適否を判断する記事ではありません。
教材は兼松エンジニアリングの2026年3月期決算短信です。2026年5月12日に公表された過去の資料を固定して使います。9月18日時点の最新業績・最新会社予想を示すものではありません。 実際の調査では、以後の四半期開示や予想修正も確認します。
資料を探す場所を分ける
| 調べたいこと | 最初の確認先 | 記録するもの |
|---|---|---|
| 決算短信・決算説明資料 | 企業のIRサイト | 資料名、公表日、対象期 |
| 業績・配当予想の修正など | 企業IR、TDnet | 開示日時、修正前後、訂正の有無 |
| 有価証券報告書などの法定開示 | EDINET、企業IR | 提出者、書類名、対象期間 |
| 四季報・民間データの数字の根拠 | その資料の出典欄、企業開示 | 会社予想か編集部予想か、更新日 |
TDnetは適時開示情報、EDINETは有価証券報告書などの法定開示書類を扱う仕組みです。同じ会社でも、探す書類によって入口が変わります。JPXのTDnet案内、金融庁のEDINET案内
二次資料を使うこと自体が問題なのではありません。ただし「会社予想」と「第三者の予想」は作成者が違うため、一つの数値として上書きしないようにします。
実例:表紙だけで記録できる7項目
企業IRの決算短信一覧で2026年3月期を探し、対象のPDFを開きます。閲覧ソフトで数える「PDFの1ページ目」と、本文に印刷されたページ番号は異なるので両方を区別します。
| 記録欄 | 原本で確認した内容 |
|---|---|
| 会社・証券コード | 兼松エンジニアリング・6402 |
| 資料 | 2026年3月期 決算短信 |
| 公表日 | 2026年5月12日 |
| 会計基準・範囲 | 日本基準・非連結 |
| 業績の対象期間 | 2025年4月1日〜2026年3月31日 |
| 表紙の金額単位 | 百万円。百万円未満切捨て |
| 確認場所 | PDFの1ページ目、経営成績の表 |
特に「非連結」は落としやすい項目です。すべての企業の決算短信を「連結経営成績」と呼ぶのではなく、実際の表題を読みます。
数字を転記し、単位を換算する
この資料の表紙には、2026年3月期の売上高が 14,097百万円とあります。円や億円へ換算すると次のようになります。
- 円:14,097 × 1,000,000 = 14,097,000,000円
- 億円:14,097 ÷ 100 = 140.97億円
「14,097億円」ではありません。転記するセルの上に単位を書くだけで、この種の100倍の誤りを防ぎやすくなります。
同じPDFでも、貸借対照表はPDFの7ページ目(印刷ページ5)から始まり、単位は千円です。表紙の単位をそのまま後ろの明細へ流用しないでください。対象PDF
実績と会社予想を別の行にする
表紙の後半には次期業績の予想も載っています。同じページにあるからといって実績に混ぜないよう、状態と公表日を追加します。
| 対象期 | 状態 | 売上高(百万円) | この数値の公表日 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 実績 | 14,097 | 2026年5月12日 |
| 2027年3月期 | 同資料公表時の会社予想 | 13,000 | 2026年5月12日 |
両者の差額は13,000−14,097=−1,097百万円です。これは「翌期に実際に1,097百万円減った」という意味ではありません。あくまで公表時の予想と前期実績との差です。
会社予想の説明はPDFの6ページ目(印刷ページ4)にあります。表の数値と説明を同じ資料で結び付け、その後に予想修正がないかを企業IRで探す、という順番で確認できます。
調査メモを1枚にまとめる
以下の欄をコピーして、別の企業でも同じ作業を試せます。
| 欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 調べる問い | 例:前期と今期の売上高は同じ範囲で比較できるか |
| 資料識別 | 会社、書類名、対象期、公表日、URL |
| 比較条件 | 連結/非連結、会計基準、単位、期間の長さ |
| 転記値 | 元の表記、換算後の値、実績/会社予想、PDFページ |
| 差の説明 | 自分の計算と会社の説明を別々に記録 |
| 未確認事項 | 訂正、予想修正、比較範囲の変更など |
数字が二次資料と合わない場合は、まず対象期、単位、連結範囲、実績と予想、訂正後かどうかの順で照合します。丸め方の違いもあるため、細かな差だけでどちらかを誤りと決めつけません。
練習と答え
「2,500百万円」を億円に直し、「当期通期」と「前年の半年」の売上高をそのまま増減率で比較してよいか考えてください。
答えは 25億円です。通期と半年では期間が異なるため、そのままでは同じ期間の成長率になりません。比較できる期間の資料を探し直します。
ここまでで、数値を一次資料までたどり、出典と比較条件を残す作業ができます。次に数値を解釈するときは、売上・利益率の計算練習と財務比率・現金収支の計算練習を使えます。
原本確認日:2026年9月18日。本記事は資料の読み方を説明する教材です。引用した過去の資料は最新の投資判断用データではなく、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。