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日本乾溜工業(1771)の業績・財務と増資後EPS

「個別株の一次資料確認」第3回です。日本乾溜工業(1771)は、2026年5月の第三者割当で普通株式数が約2.15倍になりました。会社予想純利益6億円を増資後の自己株式控除後株式数で割ると、プロフォーマEPSは約55.40円です。正式なEPSは期中平均株式数等で変わります。 本稿は業績・財務、株価指標、事業環境を別々に確認し、売買を推奨しません。

日本乾溜工業(1771)とはどんな会社か

結論: 日本乾溜工業は道路標示・法面工事、メンテナンス、防災関連商品等を扱う福岡証券取引所単独上場企業です。株価・時価総額を掲載する場合は福岡証券取引所等の公式市場データに基準日時を付し、発行済株式数との定義差も明記します。

主力の建設事業は、交通安全施設、法面(のりめん。山や道路脇の斜面)対策、道路防災、構造物の補修に関わります。防災安全事業では、官公庁向けの備蓄資機材や非常食などを販売しています。

本稿では二次媒体の時価総額から逆算した株価を用いません。増資後の比較を行う場合は、公式市場データの株価、会社予想純利益、期中平均株式数の基準日をそろえます。

今回の核心:増資前EPSを鵜呑みにしない

結論: 会社予想EPS116.20円は、2026年5月の第三者割当前の株式数を基礎としています。増資の1株当たり利益への影響を比較するときは、会社予想純利益を増資後の自己株式控除後株式数で割った「増資後株式数ベースのプロフォーマEPS」を参考値として併記します。これは会計上の正式なEPSや潜在株式調整後EPSではありません。

同社は2026年5月21日、普通株式5,872,300株を1株1,032円で第三者割当しました。発行済普通株式数は5,102,000株から10,974,300株へ増え、約2.15倍になりました。株式数が増えると、同じ利益でも1株当たり利益は小さくなります。ホールケーキの大きさが同じまま、切り分ける人数だけ増えるイメージです。

会社の2026年9月期純利益予想600百万円を、増資後の発行済株式数から自己株式144,854株を除いた10,829,446株で割ると、プロフォーマ(増資が期初から反映済みだったと仮定する概算)EPSは約55.40円です。

増資後株式数ベースのプロフォーマEPS約55.40円 = 純利益予想600百万円 ÷(発行済普通株式10,974,300株 − 自己株式144,854株)

概算EPSは増資の影響を比較するための試算で、会社が公表する正式なEPSではありません。

会社予想EPSは決算短信公表時点の株式数を基礎としており、その後に資本構成が変わりました。正式な通期EPSは期中平均株式数などにより決まるため、約55.40円は増資の影響を比較するための推計値です。

企業を確認する三つの軸

結論: 各軸は性質が異なるため、恣意的な点数へ集約しません。

確認軸 本記事で確認する事実 限界
業績・財務 決算数値と推移 将来業績を保証しない
株価指標 同一定義・同一基準日のPER・PBR 割安・割高を単独で断定できない
事業環境 会社開示と政策資料の接点 受注・株価上昇を保証しない

業績・財務:主力と全社の増減要因を確認

結論: 2026年9月期中間期は売上高114.06億円と増収でした。主力の建設事業も増収増益ですが、全社営業利益は資本施策費用などにより8.3%減少しています。

指標 2026年9月期中間期 前年同期比
売上高 114.06億円 +7.8%
営業利益 7.84億円 -8.3%
経常利益 8.25億円 -7.0%
親会社株主に帰属する中間純利益 5.54億円 -5.6%
建設事業の売上高 97.48億円 +9.3%
建設事業のセグメント利益 10.95億円 +8.8%

会社は2026年9月期の通期予想を、売上高200億円(前期比13.7%増)、営業利益9.40億円(同34.7%増)、純利益6.00億円(同13.6%増)で据え置いています。ただし、同社は公共工事の検収により中間期へ売上が集中しやすいと説明しており、中間進捗率だけで通期上振れを推測することはできません。

財務面では、2026年3月末の自己資本比率は60.8%です。現預金62.48億円から、貸借対照表で確認した短期借入金1.22億円と長期借入金0.50億円だけを差し引く説明用計算は60.76億円です。これはリース負債等を含む全有利子負債を確認した「ネットキャッシュ」の正式値ではありません。中間期の営業キャッシュフローは3.65億円のプラスでした。

一方、2025年9月期は売上高175.94億円(前期比0.3%増)に対し、営業利益6.97億円(同20.1%減)、純利益5.28億円(同23.3%減)でした。複数期にわたる連続増益企業ではありません。また、中間期の増収には新規連結した西部保安ホールディングスの寄与が含まれ、既存事業だけの成長率は開示資料から分離できません。

株価指標:正式なEPS・BPSと基準日を確認

結論: 増資後PBRは、FCP18取得、吸収合併、第1回優先株式2,000,000株の消却、発行諸費用などが純資産へ与える影響を現時点の開示だけでは確定できないため、次回決算で正式なBPSが示されるまで算定を保留します。PERも同一基準日の公式株価と正式なEPSを用いて確認します。

第三者割当の払込総額は60.60億円ですが、発行諸費用の概算1.63億円を差し引いた手取概算額58.97億円は、FCP18の全株式取得へ全額充当されました。したがって、払込総額を2026年3月末の自己資本へ単純加算して増資後BPS(1株当たり純資産)を求めることはできません。

さらに、取得したFCP18の吸収合併、FCP18が保有していた第1回優先株式2,000,000株の消却、取引費用なども反映する必要があります。取引後の純資産は現時点の開示だけでは確定できず、増資後PBRは次回決算で正式なBPSが出るまで算定保留とします。

本稿では比較対象の選定条件と同一基準日の一次データをそろえられないため、特定1社とのPER比較から割安・割高を判断しません。

事業環境:国土強靱化との接点を確認

結論: 国土強靱化は単なる連想ではなく、会社が中間決算で法面関連工事の増加要因として明記しています。ただし、政策の総事業費が同社の売上になるわけではありません。

第1次国土強靱化実施中期計画は2026年度から2030年度までの5年間を対象とします。国土強靱化年次計画2026では、推進施策の事業規模を5年間で「おおむね20兆円強」、初年度を約4.1兆円(うち国費約1.9兆円)と整理しています。内訳は、防災インフラの整備・管理が約5.8兆円、交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化が約10.6兆円です。

同社の法面対策、道路防災、交通安全施設、メンテナンスはこの政策領域に接続します。実際、中間決算では「防災・減災および国土強靱化対策の進展」を背景に法面関連工事が増え、建設事業は売上高9.3%増、セグメント利益8.8%増となりました。

ただし、20兆円強は政策全体の規模です。同社の利益になるまでには、国や自治体による発注、入札での受注、施工人員の確保、資材・労務費の価格転嫁が必要です。「国策テーマだから業績や株価が上がる」とは限りません。

確認できる事実とリスク

結論: 財務数値、会社予想、政策との事業上の接点、増資後の資本条件を分けて確認します。これらを「強気」「弱気」の点数へ集約せず、将来業績や株価の方向を示すものとして扱いません。

会社開示で確認できる事項

  • 財務数値: 2026年3月末の現預金62.48億円、短期借入金1.22億円、長期借入金0.50億円を確認しました。3項目だけの差額は説明用概算60.76億円で、全有利子負債を反映したネットキャッシュとは扱いません。中間期の営業キャッシュフローは3.65億円のプラスでした。
  • 会社説明: 国土強靱化対策の進展を背景として法面関連工事が増え、主力建設事業は増収増益でした。
  • 通期会社予想は増収増益: 売上高200億円、営業利益9.40億円、純利益6.00億円を据え置いています。
  • 既存の手元現預金を成長投資へ使う方針: 第三者割当の差引手取概算額58.97億円はFCP18取得へ全額充当されました。一方、それにより温存される既存の手元現預金は、基幹システム更新、人材投資、設備投資、老朽化した拠点の更新、九州でのM&Aを含む成長投資へ活用する方針です。

追加確認が必要な事項

  • 増資後株式数ベースのプロフォーマEPS: 発行済普通株式数は約2.15倍となり、会社予想純利益を増資後の自己株式控除後株式数で割った参考値は約55.40円です。これは会計上の正式なEPSまたは潜在株式調整後EPSではありません。
  • 親会社による支配条件: 株式会社麻生が議決権50.10%を持つ親会社となり、取締役1名の指名権を持ちます。一定事項には麻生の事前承諾が必要です。また、麻生による株式売却以外の理由で議決権比率が50.1%未満になった場合、会社は麻生と協議のうえ、会社負担で50.1%以上へ回復する措置を直ちに行う合意があります。将来の資本政策や少数株主への影響を要確認です。
  • 配当性向65%を目指す合意: 会社と麻生は、2026年10月1日から当面10年、連結当期純利益に対する配当性向65%を目指すことで合意しています。還元強化の側面がある一方、高い配当性向と、成長投資・内部資金の確保をどう両立するかは論点です。
  • 全社利益は足元で減益: 中間期は売上高7.8%増に対し営業利益8.3%減でした。販管費は15.46億円から17.87億円へ増えており、資本施策費用が一過性かを見極める必要があります。
  • 連続増益ではない: 2025年9月期は営業利益20.1%減、純利益23.3%減でした。
  • M&Aを除く成長率が不明: 中間期の増収には新規連結効果が含まれ、既存事業だけの伸びは確認できません。
  • 防災安全事業に特需反動: 中間期は売上高0.5%減、セグメント利益36.5%減でした。
  • 市場流動性: 福岡証券取引所単独上場です。流動性を論じる場合は、公式市場データの基準日、出来高、売買代金、気配差を示します。本稿では未確認の「小型株」「流動性が限られる」という断定を置きません。
  • 公共工事特有の変動: 発注・検収時期、入札競争、人員不足、資材高により、売上と利益が期ごとにぶれます。

前提が変わる条件を確認

将来株価の金額表示は行わず、前提と崩れる条件を記録します。

確認対象 確認する仮定 前提が変わる条件
受注・利益率 建設事業の受注と利益率が改善 発注遅延・資材費上昇
会社予想 会社予想純利益を達成 業績予想修正・株式数変更
費用・採算 資本施策費用や採算悪化が継続 費用剥落・価格転嫁

この表は将来成果を予測する区分ではありません。受注、利益率、資本施策費用、株式数、会社予想のどれが変わると前提が崩れるかを記録するものです。

今後の注目ポイント(ウォッチリスト)

結論: 通期決算では、増資後の正式なEPS・BPS、資本施策費用、手元資金の配分を確認します。

  • 2026年9月期の売上高200億円、営業利益9.40億円、純利益6.00億円の達成度
  • 増資後の正式な期中平均株式数、実績EPS、BPSと会社予想EPSの更新
  • 資本施策費用の通期総額と、翌期に剥落する金額
  • 差引手取概算額58.97億円がFCP18取得へ全額充当されたことと、吸収合併・優先株式消却・費用を反映した正式な純資産
  • 温存された既存手元現預金の基幹システム、人材、設備、拠点更新、M&Aへの配分と、ROIC・ROEへの寄与
  • 麻生および資材調達先との連携効果に関する定量的な開示
  • 麻生の取締役1名指名権、事前承諾事項、議決権50.1%維持合意が将来の資本政策と少数株主へ与える影響
  • 建設事業の受注高・受注残、法面工事・交通安全施設の既存事業ベースの成長率
  • 建設事業の利益率と、資材費・労務費の価格転嫁
  • 防災安全事業における特需反動の終了時期
  • 普通株式の年間配当予想36円の維持可否と、2026年10月から当面10年の配当性向65%方針
  • 配当性向65%と、成長投資・内部資金確保の両立
  • 追加M&A、増資、株式交換などによる再希薄化の有無
  • 福証での出来高と売買価格の開き

よくある質問(FAQ)

Q1. 増資後のPERはどう確認しますか? A. 同一基準日の公式株価と、増資を反映した正式なEPSを用います。本稿の55.40円は会社予想純利益を増資後株数で割った比較用の概算で、正式な期中平均株式数によるEPSとは異なる場合があります。

Q2. 発行済株式数が約2.15倍なら、株主価値も必ず半分になりますか? A. 必ず半分になるわけではありません。既存株主の議決権比率は低下し、増資前と同じ利益を前提にすれば1株当たり利益の計算値も低下します。一方、調達資金を充当したFCP18の利益寄与や純資産、正式EPSは、その後の業績と期中平均株式数等で変わります。差引手取概算額58.97億円の使途と、その後の決算を会社資料で確認します。

Q3. 増資後PBRは計算できますか? A. 現時点では算定を保留します。増資手取額はFCP18取得へ全額充当され、吸収合併、第1回優先株式2,000,000株の消却、発行諸費用などを反映する必要があります。次回決算で正式なBPSが示されてから確認します。

Q4. 国土強靱化の20兆円強は日本乾溜工業の受注額ですか? A. いいえ。2026年度から2030年度までの政策全体の事業規模です。同社の受注になるには、発注、入札、施工能力の確保を経る必要があります。会社の中間決算では法面工事の増加を確認できますが、将来の受注を保証するものではありません。

Q5. 株式会社麻生が親会社になったことは好材料ですか? A. 良い・悪いを一律には判断できません。会社開示にある連携方針とともに、麻生の取締役1名の指名権、一定事項の事前承諾権、議決権比率50.1%を維持する合意を確認します。資本政策や少数株主への影響は、その後の会社開示で事実を追います。

この記事の使い方

結論: 日本乾溜工業は「増資をまたぐと、データベースに表示されたEPS・PERをそのまま比較できない」ことを学ぶ教材です。分析と売買判断は分けてください。

決算資料の入手先と読む順番は銘柄分析マスター講座②、分析全体の地図は銘柄分析マスター講座①で確認できます。個別株を検討するときは、資産配分・集中度チェックで資産全体に占める割合も点検してください。

まとめ

日本乾溜工業(1771)は、2026年5月の第三者割当で株式数と資本構成が変わりました。増資後株数での概算EPSは約55.40円ですが、正式なEPS・BPS・PERは次回以降の会社開示と公式市場データを同じ基準日で確認します。国土強靱化との事業上の接点があっても、将来受注や株価上昇は保証されません。

出典・データ基準日

本記事の基準日は、財務・業績が2026年5月15日開示の2026年9月期中間決算、資本構成が2026年7月24日開示まで、政策が2026年7月3日決定の国土強靱化年次計画2026までです。本稿は株価・時価総額の比較を行いません。推計値は本文中に算式と仮定を示しています。

[免責] 本記事は教育・情報提供を目的とした一般的な企業分析であり、特定銘柄の購入、売却、保有または口座開設を推奨・勧誘するものではありません。記事中の数値・計算例は公表資料と一定の仮定に基づく概算で、期中平均株式数、会計処理、市場価格、税金、手数料等により実際の結果と異なります。投資には元本割れを含む損失の可能性があり、本記事の分析は将来の業績・株価・運用成果を保証しません。最新の一次資料を確認し、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。 投資判断はご自身の責任で行ってください。