2026年9月18日時点では、企業年金のない会社員のiDeCoは月23,000円、企業年金のある会社員・公務員は最大月20,000円です。 後者は勤務先の年金との合算条件があり、全員が20,000円を拠出できるわけではありません。確定給付企業年金(DB)加入者・公務員の上限を一律12,000円とする説明は、2024年12月改正前のものです。
この記事では、まず現在の上限を計算し、その金額を老後まで引き出せなくても家計が回るかを確認します。2026年12月1日施行予定の引上げは、末尾で現在の制度と分けて扱います。
加入区分別の掛金上限:2026年9月時点
iDeCoは自分で掛金を出し、選んだ商品で運用する私的年金です。年齢・公的年金の加入状況・受給状況等により加入可否が変わり、職業名だけでは確定しません。
| 加入区分 | 現在の月額上限 | 上限を使う前に確かめること |
|---|---|---|
| 第1号:自営業者・フリーランス等 | 最大68,000円 | 国民年金基金の掛金または付加保険料と合算 |
| 第2号:企業年金のない会社員 | 最大23,000円 | iDeCo+利用時は事業主の上乗せ分と合算 |
| 第2号:企業型DCのみの会社員 | 最大20,000円 | 企業型DCの事業主掛金との合算条件あり |
| 第2号:DB等に加入する会社員(企業型DCとの併用を含む) | 最大20,000円 | DB等の掛金相当額も合算する |
| 第2号:公務員 | 最大20,000円 | 共済掛金相当額も合算する |
| 第3号:扶養されている配偶者等 | 最大23,000円 | 所得控除が税額を減らすかは本人の所得による |
| 第4号:国民年金の任意加入被保険者 | 最大68,000円 | 国民年金基金の掛金または付加保険料と合算 |
上限の根拠は厚生労働省「iDeCoの概要」です。掛金は原則月5,000円以上、1,000円単位で設定します。企業年金加入者・公務員は毎月定額での拠出です。企業型DCでマッチング拠出をしている場合など、併用できない条件もあります。
第1号の国民年金保険料免除者は原則として加入対象外ですが、障害基礎年金受給者等には例外があります。また、iDeCoの老齢給付金を既に受給した人や、老齢基礎年金等を繰上げ受給している人も対象外です。細かな資格条件はiDeCo公式の加入資格で、自分の区分に照らしてください。
「最大2万円」でも1万2,000円になる計算例
企業年金がある場合の基本計算は、次の2段階です。DB等の「掛金相当額」は、給与から引かれる額とは限りません。勤務先の制度ごとに定まる額を人事・福利厚生担当者へ確認します。
残りの合算枠 = 55,000円 − 企業型DCの事業主掛金 − DB等の掛金相当額- 残りの合算枠と20,000円の小さい方を上限とし、月5,000円以上・1,000円単位の条件に合わせる
次は同じ式に架空の勤務先条件を入れた比較です。金額はすべて月額で、複数のDB等があれば掛金相当額を合計します。
| 仮定例 | 企業型DCの事業主掛金 | DB等の掛金相当額 | 55,000円から引いた残額 | 設定できるiDeCoの最大月額 |
|---|---|---|---|---|
| A | 25,000円 | 10,000円 | 20,000円 | 20,000円 |
| B | 25,000円 | 18,000円 | 12,000円 | 12,000円 |
| C | 49,000円 | 3,000円 | 3,000円 | 拠出できない(最低5,000円未満) |
Bは 55,000 − 25,000 − 18,000 = 12,000円 です。同じ「企業年金あり」でも、DB等の額が変われば本人の上限が変わります。Cの3,000円は、そのまま拠出できる掛金ではありません。
合算方式と最低額未満になる場合の扱いは厚生労働省の2024年12月改正資料に基づきます。上表は制度の計算練習であり、個別の加入可否を判定するものではありません。
所得控除は「出した掛金が戻る」制度ではない
本人が拠出した掛金は全額が所得控除の対象です。税金を計算する所得から差し引く仕組みであり、掛金全額が還付されるわけではありません。運用中の利益は非課税ですが、受取時には一時金・年金それぞれの課税関係があります。iDeCo公式の税制説明
たとえば毎月20,000円を12か月拠出すると、年間掛金は240,000円です。掛金全額について同じ税率が適用されると仮定した単純計算では、次の差になります。
| 仮定する税率 | 年間掛金 | 所得控除による軽減額の概算 |
|---|---|---|
| 所得税5%+住民税10% | 240,000円 | 36,000円 |
| 所得税10%+住民税10% | 240,000円 | 48,000円 |
上表は 年間掛金 × 税率の合計 による説明例です。復興特別所得税、税率区分をまたぐ場合、他の控除・税額控除、手数料、受取時の課税は含みません。本人に課税所得がなければ、この所得控除による税額軽減はありません。「配偶者が働いているから、その人の税金が減る」とも限りません。
したがって、比較するのは拠出時の節税額だけではなく、口座管理費用と商品の費用、受取時の税金、途中で使えないことによる家計への影響です。
NISAとの違いは、税金より先に換金可能な時期を見る
| 比較点 | iDeCo | NISA |
|---|---|---|
| お金を出すとき | 本人の掛金が所得控除の対象 | 買付額の所得控除はない |
| 運用中 | 運用益は非課税 | 対象商品の利益等が制度条件の下で非課税 |
| お金を使うとき | 老齢給付金は原則60歳前に受給できない | 保有商品を売却できる。価格と受渡日には注意 |
| 上限の管理 | 加入区分・企業年金等による拠出限度額 | 年間360万円、非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠分は内数1,200万円) |
| 受取時 | 一時金・年金で所得区分と控除が異なる | 対象商品の譲渡益は非課税 |
NISAの1,800万円は、単純な「一生の買付総額」ではなく取得価額で管理する非課税保有限度額です。売却した分は翌年以降に再利用できますが、年間投資枠は別の制限です。金融庁「NISAを知る」
たとえば、3年後に必要な教育費120万円と、老後まで使わない資金120万円は、同じ金額でも分けて考えます。前者をiDeCoへ拠出すると、必要時に自由に引き出せません。NISAなら売却できますが、必要な日に120万円を確保できるとは限らないため、短期の予定資金をそのまま投資へ移す解決策にもなりません。先に生活防衛資金と予定支出を分けておきます。
事業主証明書は原則廃止。給与天引きは例外
2024年12月から、会社員等がiDeCoへ加入する際の事業主証明書は廃止されました。ただし、掛金を給与天引きする「事業主払込」には、引き続き勤務先の確認・証明が必要です。iDeCo公式の手続改正のお知らせ、事業主払込の手続き
個人払込で証明書を出さない場合でも、勤務先の企業型DC・DB等の有無と掛金相当額の確認は必要です。「証明書が不要」と「会社の年金情報を調べなくてよい」は別です。
2026年12月の引上げは、現在の上限と混ぜない
厚生労働省の制度改正案内では、2026年12月1日からの変更が示されています。本記事の更新日である9月18日には、まだ施行前です。
| 対象 | 2026年9月の制度 | 2026年12月1日施行予定の制度 |
|---|---|---|
| 第2号加入者 | 企業年金なし最大23,000円、あり最大20,000円等 | 企業年金等と共通で月62,000円を上限とする方式へ |
| 第1号加入者 | 国民年金基金等と合算で月68,000円 | 共通枠を月75,000円へ引上げ |
第2号の62,000円も、企業年金がある人が全額をiDeCoに追加できる意味ではありません。同時に加入可能年齢の拡大も予定されていますが、すべての70歳未満の人が無条件で加入できる改正ではありません。申込時期・適用月・必要手続きは運営管理機関の案内に従い、施行前の掛金を将来の枠で計算しないようにします。
申込前に埋める5項目
次の欄を埋めると、「最大額はいくらか」と「自分が続けられる額はいくらか」を分けられます。
- 制度の基準月:今の掛金か、2026年12月以後の掛金か
- 加入区分:国民年金の区分と、勤務先の企業年金の有無
- 本人の上限:事業主掛金・DB等の掛金相当額を引いた計算結果
- 家計上の上限:生活費・予定支出・予備資金を引いても残る月額
- 受け取れる時期:通算加入者等期間と受給開始可能年齢
60歳から受給するには原則として通算加入者等期間10年以上が必要です。足りなければ受給開始可能年齢が後になります。拠出停止はできますが、停止しても自由に引き出せるようにはなりません。受取方法の比較は新NISA・iDeCoの出口戦略に整理しています。
改訂内容:2026年9月18日、企業年金加入者・公務員の掛金上限、事業主証明書、12月施行予定の改正を一次資料で再確認し、合算例を追加しました。
[免責] 本記事は制度を理解するための一般的な情報で、特定の商品・拠出額・税務処理を推奨するものではありません。試算は記載した条件による概算です。個別の加入資格・拠出可能額は勤務先と運営管理機関、税務上の扱いは税務署または税理士に確認してください。運用には損失の可能性があり、所得控除だけで将来の利益や元本は保証されません。