税金と費用は手取りに影響しますが、その影響は所得区分、申告方法、商品、保有期間、取引条件で異なります。
今回の Vol.8 は「制度とコスト」の話です。税金や費用は手取りに影響しますが、NISA利用や低コスト商品の選択で利益が保証されるわけではありません。適用条件と商品リスクを合わせて確認します。
Part1 まず税金の基本を知る
株式投資の利益には、大きく2種類あります。値上がり益(売却益)と、配当です。
個人の上場株式等の譲渡益や、一定の方式で課税される配当等には、原則20.315%の税率が適用されます。所得区分、申告方法、居住者区分等で扱いが異なります。
たとえば10万円の利益が出ても、約2万円が税金として引かれ、手取りは約8万円になります。
つまり、「利益=手取り」ではない。これを最初に理解しておくことが、とても大切です。
Part2 NISAという非課税の器
NISA(ニーサ)は、口座内で得た対象商品の売却益・配当等を非課税にする制度です。国内上場株式の配当には受取方式などの条件があるため、金融庁・国税庁と取引先の説明を確認します。
2026年時点の新NISAでは、1年間につみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円、合計で最大360万円まで投資できます。
さらに、生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)と決められています。
注意したいのは、使い切れなかった年間枠は翌年に持ち越せないという点です。
Part3 2つの枠の使い分け
NISAには2つの枠があり、それぞれ性格が異なります。
つみたて投資枠は、法令上の要件を満たし金融庁へ届出された投資信託などが対象です。
成長投資枠は、個別株やより幅広い商品に使える、選択の自由度が高い枠です。
どちらの枠を使うか、併用するか、年間枠をどこまで使うかに一律の正解はありません。投資目的、使用時期、家計、許容損失、商品の対象可否を確認します。
Part4 手数料という見えにくいコスト
手数料は、リターンを静かに削っていきます。
主なものは2つ。売買のたびにかかる「売買手数料」と、投資信託を保有している間ずっとかかる「信託報酬(運用管理費用)」です。
信託報酬は信託財産から日々間接的に差し引かれ、表示料率は通常年率です。保有期間が長いほど累積額は大きくなり得ますが、実額は残高や料率で変わります。
売買手数料の体系は金融機関・取引条件で異なります。同じ指数への連動を目指す投資信託でも、信託報酬だけでなく、その他費用、指数との乖離、繰上償還条件を比較します。
Part5 複利とコストの長期インパクト
コストが長期でじわじわ効いてくる理由。それは「複利」です。
たとえば、他の条件が同じで信託報酬だけが年0.1%と年1%なら、差は年0.9%です。これは費用差を説明する仮定で、特定商品の比較や収益予測ではありません。
ところが20年、30年と積み上がると、本来なら複利で運用されるはずだった分まで失われ、最終的な資産に無視できない差が生まれます。
費用は事前に確認できる項目ですが、低コストだけで将来成績は決まりません。投資対象、リスク、指数との連動状況も合わせて比較します。
Part6 制度を使うときの注意点
便利なNISAですが、万能ではありません。
非課税というメリットがある一方で、損失が出たときに、課税口座の利益と相殺する「損益通算」ができないという特徴があります。
また、制度や枠は、将来見直される可能性もあります。
だからこそ、最新の情報を証券会社や公的機関の公式説明で確認し、自分の投資方針に合った範囲で活用する。この姿勢が大切です。
Part7 まとめと次の一歩
NISAの非課税対象と費用は手取りに影響します。制度の適用条件と、商品の価格変動・元本割れリスクを分けて確認します。
費用差は長期の結果に影響し得ますが、運用成果は市場動向や投資対象にも左右されます。
次回 Vol.9 では、増やしながら受け取る「長期で増やす——高配当・連続増配・株主優待・インデックス併用」を解説します。どうぞお楽しみに!
[免責] 本記事は教育・情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却・保有を推奨または勧誘するものではありません。本文中の数値・試算は記載条件に基づく概算で、将来の運用成果、配当、価格回復または元本を保証しません。制度・税制は変更される場合があります。最新の公式情報を確認し、投資判断はご自身の責任で行ってください。