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日本プロセス9651決算分析キャッシュフロー中級者向け

日本プロセスの決算を読む|営業増益と営業CF減少の違い

日本プロセスの2026年5月期は、売上高15.7%増、営業利益31.8%増でした。一方、営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)は498百万円から191百万円へ減っています。この組み合わせを「増益なのに資金繰り悪化」と一言で片付けず、利益、現金の増減、その前年比を別々に読むのが今回の課題です。

対象は2026年7月公表の決算・説明資料です。2026年9月18日に原典照合と計算を更新しました。現在の株価判断や最新業績の速報ではなく、2026年5月期を使った決算読解の事例です。

5事業の増収は確認できる

決算説明資料8~9ページでは、制御・自動車・特定情報・組込・産業ICTの全事業で増収しています。

事業 売上高(百万円) 前期比 部門利益(百万円) 前期比
制御システム 1,945 +14.0% 487 +20.9%
自動車システム 2,632 +9.3% 649 +7.8%
特定情報システム 2,013 +12.3% 523 +5.6%
組込システム 1,838 +24.6% 371 +38.9%
産業・ICTソリューション 3,689 +19.4% 764 +28.2%

百万円未満切捨てのため、表示した部門数値を足しても会社の連結計と一致しない場合があります。また、全事業の成長率が同じではありません。会社は組込の半導体関連を好調と説明する一方、自動車は開発中止などの影響で下期が横ばいとしています。

「全事業増収」は過去1年間の結果です。すべての事業が毎四半期、同じ勢いで伸びたという意味ではありません。通期と四半期のどちらを読んでいるかを分ける必要があります。

部門利益と連結営業利益をつなぐ

部門利益を足すと約2,796百万円ですが、連結営業利益は約1,509百万円です。その間に全社費用等の調整があります。決算短信PDF 17ページの千円単位の計を使うと、次の式で一致します。

部門利益合計 2,796,015千円
− 全社費用などの調整 1,286,981千円
= 連結営業利益 1,509,034千円

したがって、部門利益率をそのまま会社全体の利益率として使ってはいけません。さらに当期純利益は前年の有価証券売却益の反動で23.0%減少しています(説明資料5ページ)。営業利益の増加と最終利益の減少も、別の層の変化です。

営業CF191百万円は、どの項目で減ったのか

決算短信のキャッシュ・フロー計算書(PDF 14ページ)から、主要項目を抜き出します。表の単位は百万円で、原資料の千円を1,000で割っています。「▲」はCFを減らす向きです。

CF計算書の項目 前期 当期 読み方
売上債権の増加による減額 ▲1,145.830 ▲578.052 売上として計上しても未回収の現金が増える
営業CFの小計 568.820 1,082.589 税支払などを加減する前の集計
保険解約による受取額 198.183 0 前期にあった受取が当期にはない
法人税等の支払額 ▲330.618 ▲935.403 税金の現金支払
営業CF 498.888 191.165 利息受取など他の項目も加減した最終値

ここから、二つの問いを分けます。

当期のCFを押し下げた項目は何か

当期は売上債権の増加578.052百万円と税支払935.403百万円が、CFを減らす向きに働きました。利益が現金化するまでの時間差を見るには、売上債権の回収を確認する必要があります。

前年よりCFが減った理由は何か

同じ二つを、そのまま前年比の悪化要因として並べるのは誤りです。売上債権による流出は前期の1,145.830百万円より567.778百万円小さくなっており、この項目単独では前年比の改善方向です。

一方、税支払は935.403−330.618=604.785百万円増加し、保険解約の受取198.183百万円もなくなっています。営業CFの小計は513.769百万円改善しているものの、税支払など、その下の項目を加減した最終CFは307.723百万円減少しました。

この違いが、「CFが小さい原因」と「前年よりCFが減った原因」を分ける理由です。税支払の全額を特定の前期利益へ機械的に帰属させることもできません。支払時期と税計算の対象を、関連する注記と併せて読む必要があります。

事業が5つあっても、顧客は集中し得る

5事業があることだけで、顧客リスクも5等分されているとはいえません。決算短信PDF 18ページの主要顧客情報には、日立製作所向け3,515,615千円、Astemo向け1,325,140千円が示されています。

全社売上高12,119,440千円で割ると、当サイト計算でそれぞれ約29.0%、約10.9%、合計約39.9%です。日立向けは制御・特定情報という複数事業にまたがっています。

これは個別顧客の将来売上が減るという予測ではありません。「事業の分散」と「販売先の分散」は違うので、同じ会社の設備投資方針が複数事業へ波及する可能性を読むための比率です。

自己資本比率と現金を同じ意味で使わない

2026年5月末の自己資本比率は79.7%、現金及び現金同等物は5,642百万円です(決算短信PDF 1ページ)。

自己資本比率は資産をどう調達したかを示す財務構成の指標で、当期にいくら現金を生んだかを示す営業CFとは異なります。手元資金があることと、事業から現金が継続的に生まれることの両方を見る必要があります。

前期末の現金同等物5,664百万円に対して当期末は5,642百万円です。営業CFだけでなく、投資・財務CFや換算差額も残高へ影響します。営業CF191百万円を、そのまま現金残高の増加額と置き換えないようにしてください。

予想EPSは自己株式取得の前提も読む

7月7日時点の2027年5月期会社予想はEPS138.91円、年間配当92円です。会社は予想EPSに自己株式取得の影響を考慮したと注記しています(決算短信PDF 1ページ)。したがって、過去実績EPSとの変化をすべて純利益成長として説明することはできません。

以下は株価を当サイトが仮定した計算練習で、当日の実際の終値や目標株価ではありません。PERは当時の会社予想EPS138.91円、PBRは期末BPS1,199.28円、利回りは予想配当92円を使います。

仮定の株価 参考PER 参考PBR 参考配当利回り
1,600円 11.52倍 1.33倍 5.75%
2,000円 14.40倍 1.67倍 4.60%
2,400円 17.28倍 2.00倍 3.83%

2,000円の場合は、2,000÷138.91≒14.40倍、2,000÷1,199.28≒1.67倍、92÷2,000×100=4.60%です。会社予想、配当、株式数が変われば再計算します。異なる基準日の他社指標を並べるより、まず自分の表の前提を明記することが重要です。

この事例から作る、3行の決算メモ

  1. 収益:全事業で増収し、営業増益。一方、全社費用を引いた連結利益と、部門利益は別。
  2. 現金:営業CFは減少。ただし売上債権による流出は前年比で縮小し、税支払増と前期の保険解約受取剥落を分けて読む。
  3. 集中と株式数:複数事業でも顧客集中は残る。予想EPSには自己株式取得の前提がある。

この3行に資料ページと計算式を添えれば、後から別の期と比較できます。会計指標の基礎は決算書の読み方、評価倍率はPER・PSR・PEGの計算教材で確認できます。

更新・出典について

2026年9月18日:公式決算短信・説明資料へ数値を再照合し、CFの当期水準と前年差の説明、主要顧客への集中、予想EPSの注記を追加しました。基準の不明確な三軸スコアと制作過程の内部参照を撤去。旧版の過去株価・他社倍率の比較は、当日のデータの定義まで再確認できる資料がそろっていないため再掲せず、仮定価格による追試可能な表へ変更しました。

本記事は一般的な決算読解の教材であり、日本プロセスその他の銘柄の売買を推奨しません。会社予想と計算用の仮定は実績ではなく、将来の利益・配当・株価を保証しません。投資には元本割れの可能性があります。

※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。 投資判断はご自身の責任で行ってください。