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ニレコのQ1増益を分解|粗利率・販管費率と検査機赤字

ニレコの2027年3月期Q1は売上高29.0%増、営業利益63.2%増でした。ただし、営業利益率の改善と、粗利益率の改善は同じではありません。会社の損益計算書を計算し直すと、粗利益率は低下し、売上高に対する販管費の割合が下がったことで営業利益率が上昇したことが分かります。

この記事は2026年8月7日公表の4~6月期決算を読む教材です。9月18日に公式資料の数値と説明を再照合しました。最新株価の評価ではなく、同社の当時の決算を使い「増益の中身」を追うための事例です。

何をしている会社か、どの部門が伸びたか

ニレコは計測・制御・検査に関わる企業です。画像処理、センシング、光学技術を、生産現場の検査や制御に利用しています。ここでは3部門と全社を分けます。

部門 Q1売上高(百万円) 前年同期比 部門利益・損失(百万円) 6月末受注残(百万円)
制御機器 1,399 +9.2% 305 3,280
検査機 375 +21.6% ▲218 1,271
オプティクス 1,077 +81.8% 320 3,140

出典:Q1決算短信の事業説明(PDF 4~5ページ)。百万円未満切捨ての数値です。3部門以外に「その他」区分があり、部門利益は全社費用等の調整前なので、表の単純合計は連結売上・営業利益ではありません。

全社は売上高2,945百万円、営業利益236百万円、受注残7,877百万円でした。会社は応用光研工業が前期第4四半期から連結範囲へ加わったことも増収要因として挙げています。したがって「既存事業だけで売上29.0%増」と読むことはできません。

買収寄与を引くと、2部門の見え方が違う

会社のQ1決算説明資料7~8ページには、応用光研工業の売上への影響額として、検査機66百万円、オプティクス185百万円が示されています。これを部門売上から単純に差し引くと、以下の参考比較ができます。

部門(百万円) 当期部門売上 開示された買収寄与 単純差引後 前年部門売上
検査機 375 66 309 309
オプティクス 1,077 185 892 592

検査機は差引後309百万円で前年の表示値と同額、オプティクスは892÷592−1≒50.7%増です。全社の増収率だけを読むより、伸び方の違いが見えます。

これは百万円単位に丸めた会社開示から行った当サイトの簡易計算で、為替など他の条件を固定した正式な「有機的成長率」ではありません。買収の影響が開示されている範囲を使い、どこまで比較できるかを明記したものです。

売上と利益の間を、千円単位で再計算する

Q1決算短信の損益計算書(PDF 8ページ)は千円単位です。百万円未満切捨ての概要表より細かい値を使い、割合を求めます。

損益計算書の値(千円) 前年Q1 今回Q1
売上高 2,283,501 2,945,128
売上総利益 810,246 945,183
販売費及び一般管理費 665,029 708,194
営業利益 145,216 236,989

当サイトによる計算結果は次のとおりです。

比率 前年Q1 今回Q1 変化
粗利益率=売上総利益÷売上高 35.48% 32.09% ▲3.39ポイント
販管費率=販管費÷売上高 29.12% 24.05% ▲5.08ポイント
営業利益率=営業利益÷売上高 6.36% 8.05% +1.69ポイント

例えば今回の営業利益率は236,989÷2,945,128×100≒8.05%です。差は丸める前の比率から計算しています。表示単位の端数処理により、前年の売上総利益と販管費の差は公表営業利益と1千円異なります。

売上総利益の金額は増えていますが、売上に対する割合は低下しています。一方、販管費は金額として増えても、売上の増加ほどは増えていません。この組み合わせが営業利益率を押し上げました。つまり、この決算の営業増益を「製品1円当たりの粗利が改善した」と言い換えるのは不正確です。

これは公表値からの算術的な分解です。粗利率低下を製品構成・買収・価格・原価へ金額分解したものではなく、その寄与額は別途会社の説明が必要になります。

検査機:受注残が増えても、利益はまだ赤字

検査機事業の受注残は1,271百万円で前期末比82.2%増ですが、部門損失は前年82百万円から218百万円へ拡大しました。会社は、売上が第2四半期以降に集中すること、一部案件の原価、受注対応費用の増加を説明しています(Q1決算短信PDF 5ページ)。

ここでは「注文がある」「売上になった」「利益が出た」を3段階に分けます。受注残が増えるだけでは、納入時期や採算は確定しません。

学習用に、残りの期間でQ1損失218百万円をちょうど埋める条件を考えると、残り3四半期の合計部門利益は少なくとも218百万円必要です。均等なら1四半期当たり約72.7百万円ですが、これは達成予測ではなく、損益分岐の算術です。実際には売上の季節性や追加費用があります。

オプティクスの部門利益320百万円と検査機の損失218百万円を同時に置くと、全社成長を一つのテーマだけで説明できないことが分かります。

手元資金から何を引いたかを明示する

会社の6月末自己資本比率は82.8%です。貸借対照表には現預金、借入金、リース債務もあるため、比率とは別に確認します。

Q1決算短信PDF 6~7ページの千円単位の値を使うと、以下の差額を再計算できます。

現金及び預金 5,398,744
− 1年内返済予定の長期借入金 222,286
− 長期借入金 247,615
− 流動リース債務 3,346
− 固定リース債務 6,474
= 4,919,023千円(約49.19億円)

これは上記5項目を用いた当サイトの説明用差額で、会社が公表する独立した財務指標ではありません。売掛金回収、在庫、設備投資、配当の必要額を引いた自由に使える現金でもありません。旧版の約49.29億円はリース債務を差し引かない計算であり、定義をそろえず比較しないようにします。

株式分割をまたぐEPSの落とし穴

ニレコは2026年8月1日に1株を3株へ分割しています。5月の通期決算短信にある次期予想EPS202.58円と、8月のQ1短信の67.53円を、利益が約3分の1へ減った証拠として比べることはできません。

202.58÷3≒67.53で、株式数の単位が違います。両資料の通期純利益予想は1,450百万円です。1株当たり数値を使うときは、株価側も同じ分割基準へ合わせます。

次の価格は市場価格や目標株価ではなく、計算練習のための仮定です。8月7日時点の分割後会社予想EPS67.53円で割っています。

仮定の分割後株価 参考PER
800円 11.85倍
1,000円 14.81倍
1,200円 17.77倍

1,000円÷67.53円≒14.81倍です。低い倍率であっても、買収寄与を除く成長、赤字事業の改善、価格に織り込まれた期待を確認する作業は残ります。成長株の指標比較では、架空企業を使いこの違いを練習できます。

この事例を別の決算へ使うときの記録表

読む対象 今回分かったこと 後続資料と比較する項目
連結成長 買収寄与を含む増収増益。2部門は寄与を単純控除して比較 既存事業と連結範囲の変化
利益率 粗利率低下、販管費率低下、営業利益率上昇 同じ3比率と変動理由
検査機 受注残増と赤字拡大が同時発生 売上化、追加費用、採算
財務 現預金と借入・リースの差額を確認 投資・資金繰りに必要な現金
1株情報 1対3の分割後EPS67.53円 分割・自己株式・予想修正

会社が説明する見通しと当サイトの計算を分けると、予想が実現しなかった場合も何を読み替えるかが明確になります。

更新・出典について

2026年9月18日:発行会社の公式PDFへリンクを統一し、粗利率・販管費率・株式分割の計算を追加しました。採点基準が明確でなかった三軸スコアは撤去。過去株価・同業中央値による比較は、当日のデータを再検証できる資料がそろっていないため、現在の評価として再掲していません。代わりに条件を明示した計算例を掲載しています。

本記事は一般的な決算読解の教材であり、ニレコその他の銘柄の売買を推奨しません。会社予想と学習用仮定は実績ではなく、将来の利益・配当・株価を保証しません。投資には元本割れの可能性があります。

※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。 投資判断はご自身の責任で行ってください。