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決算の読み方日立製作所キャッシュフロー個別株分析

日立の決算を読む|調整後利益・純利益・現金の違い

日立製作所(6501)の2026年4〜6月は、調整後営業利益が39.5%増えた一方、純利益は1.4%減りました。比較している利益の定義が違うため、矛盾ではありません。 税金などを反映する前後の違いや、受取配当金・為替差損益を分けて読みます。さらに、現金の流れは設備投資や前受金にも左右されます。この記事では同じ四半期の数字をそろえ、利益と現金を混同しない読み方を確認します。

情報確認日:2026年9月24日。最新決算は7月29日公表の2027年3月期第1四半期です。本文の「純利益」は、親会社株主に帰属する四半期利益を指します。売買判断や目標株価を示す記事ではありません。

今回見る3ポイントは次のとおりです。

  • 増減率より先に、どの「利益」を比べているかを確認する。
  • セクターの利益増と、連結の純利益を分ける。
  • 現金は営業活動・設備投資・前受金の条件をそろえて読む。

日立の決算で出てくる「利益」と「現金」の意味

利益は一定期間の収益と費用の差、キャッシュフローは現金の出入りです。どちらも会社の状態を見る指標ですが、同じ数字にはなりません。

用語 この記事での意味
調整後営業利益 売上収益から売上原価と販売費・一般管理費を引いた、日立が営業利益に代えて用いる管理指標
Adjusted EBITA(調整後EBITA) 調整後営業利益に、買収に伴う無形資産等の償却費を足し戻した指標。現金残高ではない
純利益 税金などと親会社以外の株主に帰属する利益を反映した後の、親会社株主に帰属する四半期利益
営業キャッシュフロー(営業CF) 営業活動による現金の出入りの差額
設備投資(CAPEX) この資料では有形固定資産・無形資産の取得額の合計
コアFCF M&A・資産売却等を除いた経常的なキャッシュフローという会社指標。日立は営業CF−設備投資と説明
前受金 商品・サービスを提供するより前に受け取るお金。受け取った時点の利益とは一致しない

出典:決算短信PDF1頁、決算概要3・36頁、日立「Hitachi at a glance」。他社の似た名称の指標と比較するときも、定義の確認が必要です。

調整後営業利益は39.5%増、純利益は1.4%減

同じ2026年4〜6月でも、利益の種類によって増減方向が分かれました。まず原典と同じ百万円で比較します。

連結指標(単位:百万円) 2025年4〜6月 2026年4〜6月 前年同期比
売上収益 2,258,325 2,709,586 +20.0%
調整後営業利益 211,016 294,287 +39.5%
調整後EBITA 237,527 323,529 +36.2%
親会社株主に帰属する四半期利益 192,204 189,450 −1.4%

出典:2027年3月期第1四半期決算短信PDF1頁。2025年4〜6月は2026年3月期第1四半期、2026年4〜6月は2027年3月期第1四半期です。会社資料のFY2026は2026年4月から始まる年度を指します。

計算を追うなら、調整後営業利益は (294,287 ÷ 211,016 − 1) × 100 ≒ 39.5%。純利益は (189,450 ÷ 192,204 − 1) × 100 ≒ −1.4% です。期間が同じでも、式に入れる利益が違います。

会社の説明では、調整後営業利益の増加に対し、前年の空調事業再編に伴う特別配当の反動などによる受取配当金の減少や、為替差損益の悪化などが影響しています。ここでいう受取配当金は日立が受け取る配当で、日立の株主へ支払う配当ではありません。

決算概要14頁は、純利益への前年差要因として調整後営業利益の増加832億円、受取配当金の減少451億円、為替差損益の悪化219億円などを示しています。これらの項目には税引前の数値が含まれ、税金費用等も別に反映されます。特別配当だけを減益の全原因としたり、次の期に必ず反転すると読んだりはできません。

なお、同頁の億円表示には丸めがあります。正確な純利益の前年差は、短信から 189,450−192,204=−2,754百万円(−27.54億円) と確認できます。

4つのセクターは、何が伸びたのか

4セクターとも調整後EBITAは前年同期から増えています。ただし、これは連結純利益と同じ範囲・定義の指標ではありません。

セクター 2026年4〜6月の売上収益(億円) 売上の前年同期比 調整後EBITAの前年差(億円)
DSS:デジタルシステム&サービス 7,190 +11% +141
エナジー 9,119 +37% +505
モビリティ 3,444 +21% +87
CI:コネクティブインダストリーズ 7,610 +13% +201

出典:決算概要6・31頁。全社・消去等があるため、4セクターの単純合計は連結合計と一致しません。

会社は、DSSでは国内IT案件やプロジェクト管理強化、エナジーでは受注残の売上への転換などを説明しています。モビリティには車両・信号制御や買収関連費用の減少、CIにはビルサービス・半導体関連装置などの要因があります。エナジーやモビリティでは為替影響も含まれるため、売上増のすべてを事業量の増加と置き換えないことが大切です。

送電・鉄道・ITなどの需要は分析材料になりますが、政策や需要の追い風が将来の利益や株価を保証するわけではありません。受注した案件を予定どおり納入し、利益と現金につなげられるかが次の確認点です。

現金は「営業CF−設備投資」で別に確認する

日立のコアFCFは、この資料の表示値では4,961−1,311=3,650億円です。純利益1,894.50億円と異なるのは、利益と現金の計算対象・計上時期が違うためです。

現金の確認(単位:億円) 2025年4〜6月 2026年4〜6月
営業CF 4,420 4,961
設備投資(差し引く額) 906 1,311
コアFCF:営業CF−設備投資 3,514 3,650

出典:決算概要14〜15頁。会社資料の億円表示値を使用。前年は 4,420−906=3,514、当年は 4,961−1,311=3,650 です。投資CF全額を差し引く計算とは区別してください。

前年のコアFCF3,514億円には、大口前受金の影響が約2,200億円含まれます。 会社はこれを除いた前年の水準を約1,300億円と説明しています。決算概要14頁の変化図も、その約1,300億円を起点にしています。

したがって、表示値の差 3,650−3,514=136億円 だけで、基礎的な現金を生む力がほぼ変わらないと結論づけることはできません。一方で、前年の前受金を除く比較だけで今後の現金創出が続くともいえません。案件ごとの入金時期と設備投資の両方を確認します。

直近3回の同じ四半期で、利益率と純利益を比べる

2024〜2026年の4〜6月をそろえると、調整後の利益率は上がる一方、純利益は同じ方向に動いていません。比較範囲を「直近3回の4〜6月」に限定して読むことが大切です。

連結指標 2024年4〜6月 2025年4〜6月 2026年4〜6月
調整後営業利益率 8.9% 9.3% 10.9%
調整後EBITA率 10.1% 10.5% 11.9%
親会社株主に帰属する四半期利益(百万円) 175,325 192,204 189,450
コアFCF(億円) 709 3,514 3,650

出典:2027年3月期短信PDF1頁・決算概要15頁、2026年3月期短信PDF1頁・決算概要9頁。2024年4〜6月の値には、2025年の短信に載る比較値を使用しています。同短信の注2・注4では調整後EBITAの算出式を変更し、前年の値も新定義へ置き換えたと説明されています。事業構成を一定に調整した比較ではありません。

この3回の範囲は、調整後営業利益率が8.9〜10.9%、調整後EBITA率が10.1〜11.9%です。全四半期を含む最高値や、長期の株価指標の範囲を示したものではありません。コアFCFの709〜3,650億円という幅にも前述の前受金が影響するため、安定成長の証拠とは扱いません。

利益率はそれぞれの利益を売上収益で割った値です。例えば当年の調整後営業利益率は 294,287÷2,709,586×100≒10.9%(小数第1位へ丸め)。連続増益を確認したい場合も、純利益なのか調整後営業利益なのかを固定し、同じ期間をそろえる必要があります。

財務は四半期の利益額とは別に、時点を比較します。

連結財務 2026年3月末 2026年6月末
現金及び現金同等物(億円) 13,234 15,044
有利子負債(億円) 10,090 10,569
親会社株主持分比率 43.7% 43.7%

出典:短信PDF1頁、決算概要15頁。親会社株主持分比率は、資産のうち親会社株主に帰属する持分の割合です。現金が有利子負債を上回っていても、すべての負債や今後の設備投資、案件の回収リスクがなくなるわけではありません。

利益率の計算を別の実例で確認する場合は、NCDの増収減益と営業利益率も参照できます。ただし、両社の指標の定義・事業・期間は異なるため、率の大小だけで優劣をつける比較ではありません。

大型株でも、次の決算で確かめたい反証条件

「事業の利益が増えた」という見方が続くかは、案件採算と現金回収の両面で確かめます。知名度や時価総額だけで安心とはいえません。

日立は東証プライム市場の上場会社です。大型株という規模を確認する参考計算は、2026年9月18日終値5,524円×6月30日現在の発行済株式数4,535,560,985株=約25.05兆円。株数は自己株式を含み、株価と株数の基準日は異なります。9月24日の終値や厳密な同日現在の時価総額を示すものではありません(出典:株探、日立「株式情報」)。

確認したい見方 見方を見直す具体的な条件
受注残が収益につながる 納入遅延や調達費増で、売上が増えても利益率が低下する
事業の利益が現金につながる 売掛金等の回収が遅れ、入金や前受金の変動を含めて営業CFが弱くなる
セクターの成長が続く 為替の円換算効果が縮小し、事業量・採算の改善も鈍る
足元の実績が通期につながる 会社の通期見通しや、その前提に変更が生じる

四半期の数値を単純に4倍して通期達成を判断せず、次の決算でも同じ表を埋め直します。比較用の情報の集め方は、決算資料の探し方と対象期・単位・ページの記録で確認できます。

よくある質問

調整後営業利益と純利益は、どちらを優先すればよいですか?

見る目的で分けます。事業の収益性は会社の定義を確かめた調整後営業利益、税金等を反映した結果は親会社株主に帰属する利益で確認します。一方だけを選んで、もう一方の変化を無視しないことが大切です。

コアFCFは会社に残っている現金ですか?

現金残高ではありません。一定期間の経常的な現金の流れを示す会社指標です。期末の現金及び現金同等物とは分けて読みます。

受取配当金が減ったということは、日立の株主向け配当も減ったのですか?

この説明からは判断できません。ここで減少要因になっている受取配当金は日立が受け取るお金です。株主向けの配当は、会社の配当予想・実績を別に確認します。

この決算だけで割安かどうかを判断できますか?

できません。本記事は利益と現金の定義を学ぶ教材です。条件を統一した長期の株価指標や同業比較を示しておらず、割安・割高の判定は行っていません。

次の決算でも、指標の名前から確認する

同じ会社の同じ四半期でも、調整後営業利益・純利益・コアFCFは異なる動きをします。次の資料では、指標名、比較期間、単位をそろえてから、差が生じた理由を確かめてください。

[免責] 本記事は公開資料に基づく教育・情報提供を目的とし、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。数値の表示・計算には丸めや概算を含みます。過去の実績や会社見通しは将来の業績・株価・運用成果を保証しません。株式投資には価格変動による元本割れ等のリスクがあります。最新の開示資料を確認し、投資判断はご自身の責任で行ってください。

※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。 投資判断はご自身の責任で行ってください。